経営者のための社会保険料を安くする対策と負担軽減方法

標準報酬月額を調整して保険料を削減

最もシンプルな方法は役員報酬の見直しです。報酬額を下げれば標準報酬月額も下がり、保険料負担は確実に減ります。ただし注意点があります。傷病手当金や出産手当金、将来の年金額は標準報酬月額で決まるからです。報酬を下げすぎると、これらの給付も少なくなってしまいます。

個人事業主ならではの課題と解決策

個人事業主の場合、保険料が全額自己負担であり所得や扶養家族が増えるにつれて保険料が上がることが大きな課題となっています。高い保険料を払っても、支払った分に見合うメリットを感じられないと思うことも珍しくありません。

そこで注目されているのが、雇用契約による社会保険加入という方法です。個人事業主でも正式な雇用契約を結ぶことで、社会保険に加入できるようになります。この方法は労働基準法に基づいた一般的な雇用形態で、年金事務所などでも通常の手続きとして扱われています。

社会保険料削減は経費削減の大きな武器になりますが、影響範囲をよく理解してから実行に移すことをお勧めします。専門家への相談も検討してみてください。

役員報酬と賞与の配分で保険料を安くする

効果的な手法の一つが、役員報酬と役員賞与のバランス調整です。役員賞与には健康保険と厚生年金保険でそれぞれ上限額が設けられています。

上限額を超える賞与で削減効果を狙う

この上限を超える賞与を支給すると、月々の役員報酬にかかる保険料を抑えられます。年間の総支給額が同じでも、報酬だけで払うケースと、報酬を抑えて賞与を大幅に増やすケースでは、保険料に大きな差が生まれます。

手続きと期限を守ることが必須

役員賞与を損金算入するには、株主総会での決議と税務署への「事前確定届出給与に関する届出」が欠かせません。とくに事前確定届出は、株主総会決議日または会計期間開始日から4ヵ月以内の「早い方」までという厳格な期限があります。

個人事業主向けの特別な対策

個人事業主には、従来の役員報酬調整とは別のアプローチもあります。それが雇用契約による社会保険加入という方法です。個人事業主が正式な雇用契約を結ぶことで社会保険に加入し、保険料負担を見直せます。労働基準法に基づいた雇用形態のため、年金事務所などでの手続きも一般的な社会保険加入と同様に行われます。

この方法により多くの個人事業主が保険料負担の軽減を実現しています。

保険ごとの負担割合を把握する

社会保険料の負担割合は、保険の種類で明確に分かれています。健康保険、厚生年金保険、介護保険は会社と従業員が50％ずつ負担する「労使折半」が基本です。

労使折半で負担する保険

健康保険、厚生年金保険、介護保険（40歳以上対象）は会社と従業員が同額負担です。従業員の給与から控除される保険料と同じ金額を、会社も支払います。

会社が全額負担する保険

労災保険は業務災害や通勤災害の補償が目的のため、会社が100％負担します。従業員からの控除はありません。

業種で変わる負担割合の保険

雇用保険は業種により負担割合が変わりますが、会社の方が従業員より多く負担する設計です。一般事業なら会社が賃金総額の0.90％、従業員が0.55％を負担します。（令和7年4月以降）

経営における社会保険料の位置づけ

会社負担分の社会保険料は法定福利費として経費計上されます。従業員の給与とは別に会社が負担する人件費の一部なので、経営者はこの負担割合を正確に理解し、人件費総額を把握することが大切です。

また、個人事業主が適切な雇用契約による社会保険加入を活用すれば、従来の国民健康保険や国民年金と比べて、より手厚い保障を受けながら保険料負担を軽減できる場合があります。制度活用時は専門家と相談しながら、適正な手続きを踏むことをお勧めします。